野菜みらい計画

生産者の紹介

リュテニッツァ

パプリカ
生産者

じろべ農園(山形県飽海郡遊佐町)

髙橋 洸太さん

山形県飽海郡遊佐町では2003年から地域を挙げてパプリカ栽培に取り組んできた。
パプリカ栽培のきっかけは、髙橋良彰さんが縁あって訪れたハンガリーの食文化とその食材であるパプリカに興味を持ち、自分の畑でパプリカを栽培したことから始まった。
髙橋さんは1970年に水稲で就農後、規模拡大を進め、1980年代には園芸品目の導入で複合化し、6次化事業も加えた周年農業を実践している。現在は水稲10ha、園芸品目等4ha(パプリカ、アスパラガス、トマト、えだまめ、さつまいも、そば等)および干し芋加工と、農業経営は発展に至っている。
髙橋さんが取り組んだパプリカ栽培は地域生産者への普及拡大を進めた結果、遊佐町は2010年には日本一の生産者数(85名)を誇る産地となり1)、2019年で生産量は212トン、販売額は1億円を超えた2)。JAや行政関連機関と共に、難しい無加温・土耕栽培を数々の苦労を経てパプリカ産地形成に取り組んできた2)。現在では環境保全型のパプリカ栽培が定着し、SDGsを意識した農業と地域作物のブランド確立の一役を担ったといえる。複数のパプリカの種類を栽培し、おなじみの肉厚のベル型、クリーム色のハンガリアン、楔型のパレルモ、甘く小さいフルーツパプリカなどがある。中でもハンガリアンパプリカは香り高く上品な甘さがある。トマトはシシリアン・ルージュ、カンパリ、アルルなど欧州の品種も多く栽培している。2022年から生産を開始した長粒米「プリンセスサリー」も順調に首都圏で流通している。
これら多種多様の野菜を試作栽培し、道の駅「鳥海ふらっと」で販売動向と消費者ニーズを把握しながら、現在は年間で約70種の商品を販売している。常に新しいことにチャレンジするとともに、自らも楽しむ農業を探り続けている。奥様の繁子さんが園芸品目の拡大・改善をサポートしながら、2016年に就農した長男の洸太さんによる大規模野菜経営が融合し、遊佐町の未来の農業が創造的発展中だ。
髙橋さんは、パプリカ栽培の地域貢献のみならず、雇用創成と後継者育成に取り組み、また、消費者交流による情報発信などの活動が評価され、2021年2月に大高根農場記念山形県農業賞を受賞した3)。持続可能な農業経営で地域活性化を実現させた真の功労者のひとりである。

プリンセス
サリー
生産者

伊藤 大介さん(山形県飽海郡遊佐町)

山形県遊佐町で代々農業を営み、伊藤さんは七代目になる。約8haの農地面積を有し、稲作と飼料米合わせて6.5ha、全て特別栽培で取り組んでいる。その合間に効率よくパプリカやタマネギ、日本では珍しい欧州野菜の白ナスやリーキなどの野菜を栽培している。米作りにはひとかたならぬ情熱を注ぎ、つや姫や雪若丸の他にササニシキ、ササシグレ、古代米そしてプリンセスサリー(ジャスミンライスと日本のうるち米ををかけ合わせた長粒米)の栽培を行っている。伊藤さんは海の幸で作るパエリアに合う米を作りたいとの思いから、プリンセスサリーを遊佐町で最初に育てた第一人者で、今では首都圏のレストランやカレー店で人気となっている。同地域では生産する方が増えてきている。さらに伊藤さんは一度絶滅した在来作物「彦太郎糯米」を復活させたひとりでもある。丈が180cmにもなり倒伏しやすく稲刈も難しいが、田土を鍛える昔ながらの農業とともに丹精込めて復活させた。力強く繊細な甘み、なめらかな粘りがある伝説の糯米である。冬は葉牡丹などの花も育て、家族で多岐にわたる農業を営んでいる。珍しい作物はチャレンジ精神と遊び心で始めたものだが、白ナスやリーキは難しい栽培にも関わらずヨーロッパの野菜に極めて近く食味が良い。農業を楽しむと共に、未知なる可能性も追求し、地域の新しい魅力を生み出そうとしている。
遊佐町は地域を挙げてパプリカの無加温・土耕栽培に取り組んできた経緯がある。日本海と鳥海山・出羽丘陵に囲まれ多雨多湿、日中の気温差が少ない比較的温暖な海洋性気候と鳥海山の麓を流れる月光川からの水源が、野菜栽培に最適なのかもしれない。ヨーロッパの野菜を国産で広く流通させるには安定供給が課題だが、今後、美味しく食べるレシピも添え、多くの人々に紹介し喜んで頂きたいと奮闘中だ。

トマト
生産者

nono FARM(野々ファーム:鶴岡市藤島地域新屋敷)

百瀬 光哉さん

百瀬さんは東日本大震災後に仙台から鶴岡へUターン、稼業のトマト栽培に従事した。トマト栽培法と販売法を見直し、消費者への直販を第一コンセプトとし、顧客ニーズや満足度を客観的に把握、10年間日々の改善や顧客開拓をコツコツ継続してきた。現在は確実に利益がでて、店舗販売と通販の流通が軌道に乗り、お客様の95パーセントがリピーターとなった。美味しいトマトの品質を維持・改良し続けながら、さらにスタッフを増やし規模を拡大、現在では市内の飲食店やホテルにも提供している。トマト生産者としてはあくまでも味に拘り、品質を落とさないことが最も大事だと思っている。これは野菜全般に言えることだ。
目標は、庄内地域の人々、せめて鶴岡の人なら誰でも「野々ファーム 百瀬のトマト」を誰もが知っている名前にしたいと思っている。冬季はホウレンソウやイタリア野菜を栽培しトマト同様に好評を得ている。米作りも本格的に取り組んでおり、庄内産の米は生産地でも品種でもブランドで特に藤島地区は良質な米が作れる。百瀬さんはさらなる食味向上を目指して庄内ブランドの責任感をもって邁進中だ。

ニンニク
生産者

加藤 重弥さん

定年退職後、2017年からにんにくの有機栽培を鶴岡市三瀬で取り組み続けている。知識も経験もなかったが、有機栽培の講習会をきっかけに差別化ポイントを見出し開始した。国産にんにくで最も食味良好な青森県産の福地ホワイト六片を育て、2021年8月にJAS有機認証も取得し、安心・安全な美味しいにんにくを提供している。
強みは販売施策を綿密につくり目標を設定したことだ。第一段階として有機栽培作物コーナーを産直に作り、地元で認知度を上げ、売上を確保することを考えた。店頭では、にんにくの効能やレシピの提供など、消費者の皆さんと交流し販売促進活動をした。実際、予約が入るほど人気になり順調に売上が伸びている。第二段階は首都圏への販売ルートを開発しJAS有機認証にんにくとして展開、更なる売上増をめざすことだ。現在では広く認知され、地域に「有機栽培にんにく」を仕事として実績を残すとともに、諸々のノウハウを次世代に引き継ぐ活動を行っている。
にんにくの有機栽培には畑の土づくりが重要で、日々土の状態を観察し、毎年の改良改善が必要だ。常に高い目標をもちながら継続することで、消費者の皆さんに「庄内産の安心・安全な美味しいにんにく」を提供することが使命だと思って努力している。

人参
生産者

野菜農場 叶野(鶴岡市藤島地域東堀越)

叶野 幸喜さん

野菜農場 叶野は2011年に葉タバコから野菜へ転換し、お父様から受け継いだ20haほどの畑でジャガイモ、ニンジン、赤かぶ、アスパラガス、コーン、枝豆、ウドなど様々な品目を栽培している。
畑は月山麓に位置する高原地帯にあり、一日の中で変化する気温差、光と風、赤い土壌が野菜を美味しく育んでくれる。さらに、良好な土中環境を維持するため、微生物の活動の場を増やし、作物が本来持つ生命力を回復させ、化学資材の投入量を削減、環境に優しく、低コストで永続的な農業を可能にする有機循環型農法を続けてきた。
「毎日食べる野菜だから、栄養価が高く、甘味とうま味のある、身体によいものを作りたい」お父様が常に言われてきたモットーを継続している。これらの野菜は市内の給食センター、産直や取引先に出荷している。叶野さんの人参は秋から収穫が始まるが、冬は雪の下に保管し更に甘味が増したものが店頭に並ぶ。
叶野さんは野菜の収穫体験ツアーで子供達や料理人と交流し、自分で顔の見えるお客様に売るようになったことで、農業の面白さを実感したそうだ。よりたくさんの人々に野菜の美味しさを知ってもらいたい気持ちで、日々の作業に励み、料理教室や食育活動に取り組んでいる。

孟宗筍

孟宗筍
生産者

栗本 孝雄さん(鶴岡市湯田川)

200年の歴史がある家、栗本由兵衛(よしべえ)が保有する広大な竹林は湯田川から西2キロ先の田川に向かう途中の大日坂近くにあり、田川地区で最初に孟宗筍が移入された大蔵院の山に連なる位置にある。酸化鉄を含む赤土粘土質で湿度があり、適度に日光が差す山の斜面は、孟宗筍の生育に最適な土壌である。近隣地区、湯田川の長福寺の竹林とほぼ同様の土壌質で、孟宗筍はとてもやわらかく、えぐみもない風味豊かである。
先祖代々大切に継承してきた孟宗山は、現在は8代目の栗本孝雄が所有・管理している。春の収穫が終わると秋には竹の伐採をして翌年に備える。

リュテニッツァについて

商品説明

山形県遊佐町のパプリカと庄内産の野菜で作ったリュテニッツァはブルガリア伝統の野菜ペーストです。地元の食材で丁寧に調理。パンにぬったり、野菜や魚・肉料理の付け合わせに使える万能ペースト!化学調味料、着色料や保存料を一切加えず、地元の野菜だけで作られています。
山形へ、東欧の国々へ想いを馳せる味、栄養たっぷり、料理で大活躍するペーストです。

リュテニッツァ開発の経緯

<ブルガリアのスーパーで販売されているリュテニッツァ>

山形県飽海郡遊佐町のパプリカ栽培はハンガリーとの交流から始まり、2003年から現在まで難しい無加温・土耕栽培を地域全体で取り組んできた1)。厳しい栽培条件をクリアし生活クラブ生協を通じて広く流通されている。ハンガリーの食文化とその食材であるパプリカの美味しさに感銘を受けた遊佐町の生産者の想いと栽培に関わった地域の人々の物語を発信するために、手軽な加工食品を作ることにした。欧州各国で出会った複数のパプリカペーストの中で最も美味しいブルガリア伝統の保存食であるリュテニッツア(Ljutenica)を、遊佐町産パプリカを主に試作を重ね、農商連携に行政の協力も得て商品化プロジェクトが2020年1月より始まった。
試作途上で、東京オリンピック・パラリンピックのブルガリア新体操チームのホストタウンである山形県村山市のスポーツ交流員、アントアネタ ヴィダーレさん2)3)にヒントを頂いた。リュテニッツアは2019年10月24日NHKの「世界は欲しいものであふれている」で紹介されたことがある。その後、ソーシャルメディアで情報交換され、複数のレシピがある。また、国内でも一部商品化されており輸入品も流通している。
本商品には、山形県内の地域と欧州との絆、両国の食文化への敬意、野菜の栽培にかかわった人々の物語が込められている。食材はパプリカ以外に山形県庄内地方の栽培にこだわった野菜(トマト、人参、玉葱、ニンニク)を使い、それらの規格外品を活用している。そして、地域の共同加工場(山形県飽海郡遊佐町)4)を利用し、地域活性化の一役も担う商品として完成した。鳥海山の恵みで育まれたパプリカで作ったリュテニッツァを通じ、地域の風土、農業、人々と食をつなげ、地域の宝として紹介したい。是非、家庭料理を手軽にワンランクアップさせる食品として活用して頂きたい。そして、日本にいながら欧州の食文化を知るきっかけとなり、現地へ想いを馳せて味わって頂ければ嬉しく思う。

孟宗筍について

庄内の孟宗筍のルーツ

庄内に孟宗筍(モウソウチク)が現れた記録は諸説あるが、天明年間(1780~)、鶴岡の著名な歌人である杉山 廉の「おそさくらの記」にある記述が最も有力である。「庄内の孟宗筍は、まず各地の社寺に最初に植えこまれたようで、鶴岡市三瀬の気比神社、鶴岡市の金峯神社、鶴岡市田川の大蔵院、鶴岡市谷定(たにさだ)の御嶽神社であったとされ、ほぼ間違いない」と記されている。社寺関係に移入された所以は、京都方面に行き来した修験者が持参したものではないかと推定している。

ところが、江戸時代は藩政時代の林政と深くかかわり合っていたようで、竹を大事にし竹を自由に採ることは許されなかった。別格だった社家に植えこまれ、やがて林政が無くなってから明治時代に一般家庭に広まったとの説が有力な推論である。湯田川孟宗はこの例であり、最初に長福寺の竹林に植えられ、これらが昭和に入ってから京都の技術者を招いて講習会を行い量産されるようになったそうだ。

出典:なんじゃもんじゃ -江戸時代の自然と産物をさぐる― 若松多八郎

孟宗汁の味文化(豚肉の有無)

孟宗汁は孟宗筍、厚揚げ、椎茸を味噌と酒粕で仕上げるが、豚肉を入れる派と入れない派に分かれる。出汁は昆布と椎茸が主だが、鰹だしを入れる場合もある。湯田川の孟宗汁は肉を入れずシンプルな味付けで、掘りたて旬の孟宗筍の風味を楽しむ目的があるという。しかし、庄内の鶴岡市中心部から北東部、酒田地域は豚肉を入れる家庭がほとんどである。豚肉入はコクのある味わいが孟宗筍に溶け込み、えぐみを和らげ美味しく食べることができる。両者の味は甲乙つけがたい。孟宗筍は掘ってから5時間以内に処理をしないとえぐみが出てくる。地元で消費されることが多い所以は、鮮度のよい状態で食するのが最も美味しいからである。まさに旬の食材を味わう最高の贅沢だ。

孟宗汁に豚肉が使われている背景には、終戦後の昭和中期から始まった養豚業にあるようだ。明治39年に庄内地域の酒田市黒森地区に養豚が初めて導入され、その後、昭和45年の減反政策で当時のJA庄内経済連(現在の全農山形)が養豚に力を入れ、庄内豚産地のきっかけとなった。庄内地区にある県の養豚研究所では地元密着の研究を行っており、官民一体で養豚による地域振興が図られ、庄内豚はブランドとして味と品質で高い評価を得ている。

出典:農林水産省「農林業センサス」※旧町村分も加味して算出(昭和45~17年)山形県ホームページhttps://www.pref.yamagata.jp/「豚肉と味噌煮の芋煮」より
情報提供:山形県庄内総合支庁 酒田農業技術普及課

ユネスコ食文化創造都市鶴岡

食文化創造都市 鶴岡

鶴岡市では、多彩な食文化を次代に継承するとともに、食関係産業の振興に取り組むことを目的に、産・学・官・民の連携のもと、平成23年7月に「鶴岡食文化創造都市推進協議会」を設立。平成26年12月に「ユネスコ創造都市ネットワーク 食文化分野」への加盟が認定されました。 日本初の「ユネスコ食文化創造都市」として、多彩な食文化の継承・創造や国内外の都市とのパートナーシップにより創造的な産業の創出に取り組み、地域経済や学術・文化の振興・発展を図ってまいります。

孟宗汁監修 「日本料理わたなべ」

店主 渡部 賢氏
日本料理わたなべ

日本料理わたなべ」の店主、渡部 賢氏は、料理人と農家の二刀流。地産地消を心掛け、地元食材にこだわる本格的な日本料理を提供している。減農薬の特別栽培米つや姫、自家栽培した野菜、魚や肉と酒やジュースも地元産、自家製の漬物や味噌、付け合わせや調味料にまでこだわった料理を提供している。実直で真摯に料理に向き合う姿勢が料理にも反映され、一切の妥協も許さない。日本料理ならではの目で楽しむ美しさ、食材本来の味を引き出し、素朴な故郷の味、洗練された斬新な驚きもあり、心豊かに贅沢なひとときを過ごすことができる。
第2回鶴岡No.1次世代料理人決定戦でグランプリを受賞、鶴岡市卓越技能者として注目され、躍進著しい地域功労者である。