開発の経緯
山形県では、将来においても県産農林水産物の持続的な安定生産をめざし、2010年3月に「地球温暖化に対応した農林水産研究開発ビジョン」を策定し、このビジョンに基づき庄内地方で複数の柑橘類などの適応性試験を実施してきた。それらの中で、すだちは庄内地方での適応性が高いことから、2014年に栽培実証や生産拡大を進める事業を開始した。
庄内地方の5市町で栽培されているすだちは雪国での厳冬に耐えて成木となり、2023年頃から果実が販売されるようになった。2024年はこれまでで最も多く収穫でき、JA庄内たがわを通じて庄内地方の青果店や飲食店に販売され、首都圏にも流通を開始している。
鶴岡市朝日地区では健全な木が多く、まとまった量の収穫ができている。冬の冷たい風から如何に木を守るかが越冬の鍵となるが、朝日地区では冬の積雪が多く木全体が雪に埋まってしまうため零度以下にはならず寒風からも守られ、良好な状態で越冬できるようである。
雪解けの春4月、不織布を除去し木の状態を確認し剪定作業を行う。5~6月は気温上昇とともに成木は枝が伸び多くの花を咲かせ、ミツバチが花にやってきて受粉が進んでいく。7月は果実の葉陰を防ぎ大きく育つように摘果作業を行い、8月は水をやりながら果実がピンピン玉用の大きさになるまで成長を見守る。9月になると深緑の果実を丁寧に収穫していく。収穫後は予措(よそ)という果皮の水分を飛ばす作業を行う。水分を飛ばすと栄養のある果皮が腐りにくくなり、処理後、冷蔵し、出荷・保存に備える。
すだち栽培は山形県庄内総合支庁で栽培技術向上に向けた研修会や栽培指導を実施しており、近年は若い果樹生産者のすだち栽培希望が増えてきている。
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2025年3月中旬。
不織布で覆った状態で越冬。
厳冬期は木全体が雪に埋まる。 -
2025年4月上旬。
不織布を除去した成木(人間の背丈ほど)。
越冬後も健全。
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2025年6月上旬。順調に成長。
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枝が伸び多くの花をつけた北限のすだち。
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2025年7月下旬。摘果。
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庄内総合支庁明石研究員による摘果指導。
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2025年9月上旬。収穫。
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鶴岡市朝日地区:佐藤 勝さん。
<情報提供元>
山形県庄内総合支庁
地域産業経済課
農業技術普及課
農業技術普及課産地研究室
JA庄内たがわ、あさひスダチ会



